ミニレターの愛称になった郵便書簡

動物園で新たに生まれた動物の赤ちゃんの名前を募集したり、キャラクターやマスコットの愛称を募集していることがあります。

より親しみと愛着を持ってもらうためであり、同時にPR活動の一環として広く宣伝・周知する目的もあります。

今から数十年前に郵便書簡の愛称を公募したのもPRと利用者の拡大を狙ってのことでした。

 

全然売れなかった郵便書簡

1966年(昭和41年)7月、郵政省は品質の改良と郵便料金値上げに伴い、約2億円を投じて新しい郵便書簡(15円)を1億冊用意しました。

しかし期待に反して売れ行きはさっぱり。その後も販売不調が続きます。

販売開始から約2年後の新聞紙面には売れない郵便書簡についての記事が掲載されています。

「捨てた方がいい」参院委で小林郵政相が答弁 売れぬ簡易郵便書簡

十四ヵ月間で一割足らずしか売れず

-朝日新聞 1968年4月11日

 

八千万枚を廃棄 売れ行きさっはりムダになった二億円

-読売新聞 1968年4月11日

 

「郵便書簡、半年待って再検討」-小林郵政相語る-

小林郵政相は十二日の閣議後の記者会見で郵便書簡〜(中略)にふれ次の通り語った

「郵便書簡は売れ行きが悪いため~(中略)今後の方針を協議した結果、さらに、PRなどの企業努力を重ね、その売れ行きを見たうえで、六か月後に廃棄するかどうの最終方針をきめたい」

-読売新聞 1968年4月12日夕刊

各記事にある通り、いかに郵便書簡が売れなかったのかお分かりいただけたと思います。

売れなかった理由を小林郵政相(当時)に言わせれば

「国民感情に合わんよ」

だそうです。国民感情って何なんだよ?って話ですが商品のPR不足が主な原因だったみたいです。

 

ミニレターに決まる

もちろん郵政省もただ手をこまねいていたわけではありません。売れない状況を打開するために打ち出されたのが愛称の公募です。

○公募要項○

募集期間:1967年(昭和42年)4月21日~5月31日

賞金:入選20万円(同案多数の場合は抽選10名で均等等分)

 

審査委員には講談師の一龍齋貞鳳さんや女優の倍賞千恵子さんなど迎え、6月12日に結果が発表されました

全国から約5万点の応募があり

入選したのが「ミニレター」

佳作には「こばと」や「ライトメール」などが選ばれています。

個人的には「ライトメール」がかっこよくて好きです。「こばと」もかわいらしい愛称で小さく折り畳んで使える郵便書簡に合っているのではないかと思います。

 

アピールが重要

愛称は無事に決まりましたが、思ったように宣伝効果を得られず、先の新聞記事で挙げられたように売れ行きは伸び悩む一方。

そのまま廃棄処分まっしぐらの道を辿っていた郵便書簡ですが事態は急転します

新聞等の各メディアで『売れない』と散々叩かれた報道が皮肉にも宣伝の役割を果たすことになり 、なんと報道後からの売れ行きが約2倍に上昇する結果に!

もちろん、その後の周知活動や営業活動も功を奏したんでしょうが、ほんと何が起こるかわからないものですね・・・(^_^;)

報道で郵便書簡を知った人も多かったみたいで「便利なものなんだから、何でもっと知らせないんだ。」こういった声もあったようです。

ただ良いモノを作るだけでなく、その作ったモノの良さをきちんとアピールする大切さがよくわかるエピソードでした。




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